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網膜剥離とは

網膜剥離は、眼球の内側を覆う神経組織である網膜が、その下層から剥がれてしまう状態を指します。眼球はカメラに例えることができ、網膜はカメラのフィルムに相当します。角膜・水晶体というレンズを通った光が網膜に当たると、網膜はそれを電気信号に変換し、視神経を通じて脳に伝達することでものを見ることができます。網膜が剥がれると、その部分では正常に光を感知できなくなり、視力低下や視野欠損などの症状が現れます。
網膜剥離は緊急性の高い眼疾患であり、
適切な治療を行わなければ永久的な視力喪失につながる可能性があります。
そのため、早期発見と早期治療が視力予後を大きく左右します。
網膜の構造
網膜は10層の組織から構成される複雑な神経組織です。最も深い部分は網膜色素上皮と呼ばれる層で、網膜剥離とはこの網膜色素上皮から網膜が剥がれてしまう状態を指します。
網膜の中で最も視機能が集中している部分を黄斑(おうはん)と呼び、特に黄斑の中心部である中心窩は視力に直接関わる重要な部位です。網膜剥離が黄斑に及ぶかどうかは、治療後の視力予後に大きく影響します。
網膜剥離の種類
網膜剥離は主に以下の3つのタイプに分類されます。
裂孔原性網膜剥離
網膜剥離の中で最も多く見られるタイプです。網膜に裂孔(れっこう)や円孔(えんこう)が生じ、そこから眼内の液体(液化硝子体)が網膜の下に入り込むことで剥離が発生します。
発症原因
- 加齢による硝子体の変化
- 強度近視による網膜の薄弱化
- 外傷
- 遺伝的要因
裂孔原性網膜剥離は特に近視の方、特に強度近視の方に多く見られます。年齢別では20代と50代にピークがあるとされています。
裂孔原性網膜剥離は進行する疾患
初期には小さな範囲の剥離から始まり、時間の経過とともに剥離範囲が拡大していきます。剥離した網膜は栄養が十分に行き渡らなくなるため、長期間放置すると網膜の機能が低下し、たとえ手術で網膜を元の位置に戻せたとしても視機能の回復が不十分となる可能性があります。
牽引性網膜剥離
眼内に形成された増殖膜(異常な組織)や変性した硝子体が網膜を引っ張ることにより剥離が発生するタイプです。
主にこのような疾患で見られます
- 重症の糖尿病網膜症
- 未熟児網膜症
- 硝子体網膜の炎症性疾患
滲出性網膜剥離
網膜や脈絡膜からの異常な液体の漏出により、網膜下に液体が貯留して剥離が起こるタイプです。
主にこのような疾患で見られます
- ぶどう膜炎
- 眼内腫瘍
- 中心性漿液性脈絡網膜症
- 加齢黄斑変性症
網膜剥離の症状
前駆症状
飛蚊症
視界に小さな点や線、クモの巣のようなものが浮かんで見える症状。突然多数の飛蚊症が出現した場合は特に注意が必要です。
光視症
閃光や稲妻のような光が見える症状。特に暗い場所で目立ちます。
網膜剥離の主な症状
視野欠損
カーテンがかかったように視界の一部が見えなくなる症状。剥離が進行するにつれて欠損範囲が拡大します。
視力低下
特に黄斑部が剥離した場合に顕著です。
変視症
物がゆがんで見える症状。
網膜には痛覚がないため、網膜剥離が起きても痛みはありません。無症状の場合もあり、定期的な眼科検診で偶然発見されることもあります。
網膜剥離の検査
眼底検査
瞳孔を散瞳させた後、特殊な装置で網膜の状態を詳しく観察します。
超音波検査
網膜剥離の範囲や程度を評価します。特に網膜が見えにくい場合(硝子体出血や白内障がある場合など)に有用です。
光干渉断層撮影(OCT)
網膜の断層画像を撮影し、剥離の状態を詳細に評価します。
網膜剥離の治療
網膜剥離の治療は、その種類や重症度によって異なります。ここでは最も一般的な裂孔原性網膜剥離の治療について説明します。
網膜裂孔・円孔のみの場合
網膜に裂孔や円孔があるものの、まだ剥離が起きていない場合には、以下の予防的治療が行われます。
レーザー光凝固術
裂孔周囲の網膜をレーザーで凝固し、網膜と下層の色素上皮を癒着させることで剥離を防ぎます。
網膜冷凍凝固術
眼球の外側から冷却プローブを当て、裂孔周囲の組織を凍結凝固します。
網膜剥離が発生している場合
網膜剥離が発生している場合は、手術治療が必要となります。主な手術方法は以下の通りです。どちらの手術でも、術後にはガスやオイルの浮力を利用するため、一定期間(数日〜数週間)うつ伏せなどの特定の体位を保つ必要があります。
強膜バックリング手術
眼球の外側から網膜裂孔の部分に特殊な材料(バックル)を縫い付け、眼球壁を内側に押し込むことで網膜を元の位置に戻す手術です。必要に応じて次の処置も併用します。
- 網膜裂孔周囲の凝固処置
- 網膜下液の排液
- 眼内ガスの注入
硝子体手術
眼内に細い手術器具を挿入し、硝子体を取り除いた後、網膜裂孔を処理し、眼内に空気やガス、シリコーンオイルなどを注入して網膜を押し戻す手術です。複雑な剥離や再発例には特にこの方法が選択されます。
網膜剥離の予後
網膜剥離の手術成功率は比較的高く、初回手術での成功率は約90%と言われています。しかし、以下の要因によって予後が左右されます。
- 剥離範囲が広い場合や、剥離期間が長いほど予後は不良です。
- 黄斑が剥離していない場合、視力予後は良好ですが、黄斑剥離がある場合は完全な視力回復が難しいことがあります。
- 黄斑剥離から手術までの期間が短いほど、視力回復の可能性は高くなります。
- 若年者の方が回復の力が高い傾向があります。
- 術前視力が良好なほど、術後視力も良好なことが多いです。
一度の手術で網膜が復位しない場合は、複数回の手術が必要となることもあります。また、重症例では増殖性硝子体網膜症と呼ばれる状態に進行することがあり、最大限の治療を行っても視力回復が困難な場合があります。
網膜剥離のリスク因子
このような方は網膜剥離のリスクが高いため、定期的な眼科検診が重要です。
- 強度近視の方
- 網膜裂孔や格子状変性がある方
- 反対眼に網膜剥離の既往がある方
- 家族に網膜剥離の既往がある方
- 白内障手術後の方
- 眼外傷の既往がある方
早期発見のために
網膜剥離は早期発見・早期治療が非常に重要です。次のような症状を感じた場合は、速やかに眼科を受診してください。
- 突然の飛蚊症(特に多数の飛蚊症)
- 閃光やきらめきが見える
- 視界の一部が欠ける、カーテンのようなものがかかる
- 急激な視力低下
つじおか眼科での網膜剥離治療

当院では最新の検査機器を用いた正確な診断と、患者様の状態に合わせた適切な治療方針のご提案を行っています。網膜剥離が疑われる場合は、専門医療機関との連携も含め、迅速に対応いたします。網膜剥離は早期治療によって良好な視力予後が期待できる疾患です。気になる症状がある方は、お早めにご相談ください。